西伊豆町役場 様
公衆回線で行なっていたファームバンキングをLGWAN経由に移行。
専用端末の維持管理コスト削減とともに業務効率化やセキュリティ強化も実現
伊豆半島の西岸に位置する静岡県賀茂郡西伊豆町は、眼前に駿河湾を臨み、絶景の夕陽スポットをいくつも抱えている。日本の夕陽百選にも認定された大田子海岸を初め、堂ヶ島、安良里港などが有名だ。また西伊豆町役場では、町の財政を支えるために数年前に各課横断のふるさと納税プロジェクトを立ち上げ、返礼品の商品開発などの取り組みも開始した。チーム発足から2?3年後には県下トップの寄附金を集めるまでになり、2014年には3億円を突破、以降3年連続で10億円を超えている。
同町役場では、毎月末に住民の口座から税金や社会保険料を引き落とす口座振替処理を行っているが、これまで各金融機関とデータをやり取りする際には、通常業務で利用する総合行政ネットワーク(LGWAN)とは別の公衆回線を利用する必要があった。この業務で発生する様々な手間を無くすために同町役場が採用したのが、LGWAN経由でファームバンキングを実現するTOKAIコミュニケーションズの「JFT-LGWAN」だ。
組織名 | 西伊豆町役場 |
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所在地 | 静岡県賀茂郡西伊豆町 |
Webサイト | https://www.town.nishiizu.shizuoka.jp/ |
ご紹介文 |
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西伊豆町役場
窓口税務課 納税徴収係長石川 孝佳 氏 -
西伊豆町役場
窓口税務課 納税徴収係齋藤 英知 氏
導入効果
- LGWAN経由でセキュアなファームバンキングが可能に
- 専用端末、ソフトウェア、回線が不要となり、維持管理コストを削減
- 複数金融機関とのやり取りをJFT-LGWANに一元化することで、データ受け渡しの手間が大幅に軽減
口座振替処理の業務負荷が課題に
西伊豆町役場では、毎月末に税金・社会保険料・水道料金を住民の登録口座から引き落とすための口座振替業務をファームバンキングで行っている。まず、締め日(=月末)の数日前に基幹システムから引き落としに必要なデータを抽出し、各金融機関に伝送する。この業務において、基幹システムから抽出したデータを一旦フロッピーディスク(FD)に保存し、金融機関と通信が可能な専用端末にコピーした上で伝送処理を行う必要があった。従来の問題点について、窓口税務課 納税徴収係長 石川孝佳氏は、次のように説明する。
「行政機関専用のネットワークであるLGWANに接続できるPC端末からは、金融機関と直接通信することができません。ファームバンキングの処理をするためには、別途公衆回線(ISDN)と専用の端末を利用する必要がありましたが、その専用端末が陳腐化してきており、さらに処理のたびに端末間でデータを移動させる手間がかかっていました」(石川氏)。
金融機関による引き落とし処理が完了した後には、改めて入金消込用のデータを金融機関から専用端末で取得した上でFDに保存し、通常業務用のPCを経由して基幹システム反映させるという作業も必要となる。窓口税務課 納税徴収係 齋藤英知氏も「こうした課題を何とかできないものか、ずっと考えていました」と続ける。
これまで同町役場では、旧バージョンのWindows OSを搭載した専用端末にファームバンキング用のソフトウェアを搭載してこの処理を行っていた。最初に検討したのが、専用端末のOSをWindows 10に移行し、同時にファームバンキング用のソフトウェアも刷新するという方法だ。しかし、この方法では口座振替業務のたびにデータをFDに保存して移動させるという手間は依然として残り続けることになる。また、サービス終了が控えているISDN回線についても検討が必要であり、加えてFDなどの可搬記憶媒体をデータ移行で利用している限り、媒体の紛失などのセキュリティ上の不安は払拭できない。こうした検討を進める中で出会ったのが、TOKAIコミュニケーションズの提供する「JFT-LGWAN」だった。
JFT-LGWANの導入で専用端末もISDNも不要に
JFT-LGWANは、企業内および企業間のデータ交換システムで要求される高い信頼性と耐障害性を備えたEDIデータ交換システム「JFT」を、LGWANを介して利用できるLGWAN-ASPサービスとして提供するものだ。
「当初、金融機関と膨大な納税データをやり取りする必要があるふるさと納税の担当者が、TOKAIコミュニケーションズからJFT-LGWANの提案を受けていたのですが、その時に一緒に説明を聞いたのがJFT-LGWANとの出会いでした。その場で“これは業務改善に活用できる”と感じたのです」(齋藤氏)。
JFT-LGWANを採用することで、通常業務で利用する端末からLGWANに接続し、そのままファームバンキングの処理を完結できるようになる。今まで使っていた専用端末もファームバンキング用のソフトウェアも、さらにはISDNも不要となるのだ。しかし、窓口税務課では、JFT-LGWANを知った時点で専用端末のWindows 10への移行と新しいファームバンキング用ソフトウェアの導入をほぼ決めていた。
「端末とソフトウェアの入れ替えという手段を選択することを前提として、同様の仕組みを利用していた他の自治体へ視察に行くことも決めていました。しかし長い目で見れば、利便性の面からも、セキュリティの面からも、JFT-LGWANを導入しておいたほうが絶対にメリットが大きい。そこで、JFT-LGWANを採用する方向へ一気に舵を切り直したのです」(齋藤氏)。
複数の金融機関との取引をJFT-LGWANで効率化
さらに、JFT-LGWANは各金融機関とデータをやり取りする際の手間も劇的に軽減してくれるものだった。この点について石川氏は、次のように説明する。
「口座振替業務に関連した取引を行っている金融機関は7つあるのですが、データをやり取りする経路は厳密には3つあります。1つ目が、先に紹介した専用端末からISDN経由でデータをやり取りする方法、2つ目がインターネット経由でデータをやり取りする方法、そして3つ目が、データを保存したFDを直接金融機関まで持っていく方法です。金融機関に取引方法を合わせる必要があるため、このような形で運用していました。特に3つ目の方法では、締め日前に金融機関にFDを持って行き、引き落とし後には消込データ受領のために再度FDを持って先方に出向き、データを持って帰ってくる必要があります。今後少子高齢化が進む中で職員の数を増やしていくことは難しく、いかに業務の効率化を図っていくかは非常に重要なテーマです。業務効率化に加え、働き方改革という観点から見ても、JFT-LGWANは我々の課題を解決してくれるものでした」(石川氏)。
一方、地方自治体では、税金を活用してプロジェクトを進めるため失敗は許されない。前例のない取り組みについては慎重にならざるを得ないという実情がある。
「実際に上司からは、ISDNの正式なサービス終了時期がまだ先であるため、そんなに急がずに今のままでいいのではないかとも言われました。しかし現在のやり方では、専用端末とソフトウェアの入れ替えは数年周期で必ずやってきますし、その度にコストが発生します。また、データ移行のために可搬記憶媒体を利用する際のヒューマンエラーやセキュリティといった課題も残ります。JFT-LGWANを導入すれば、そうした課題を全て解決できるという点を十分に説明して、承認を得ることができました」(齋藤氏)。
他業務でのJFT-LGWAN利用拡大を見据えて
西伊豆町役場では、2018年6月にJFT-LGWANの提案を受け、8月から導入プロジェクトを開始。2019年4月にカットオーバーを迎えた。「JFT-LGWANを導入したことで、これまで使ってきた専用端末とソフトウェア、ISDNが不要になり、PCやソフトウェアを買い替える必要もありません。システムを入れ替えるための導入コストやランニングコストが発生しなくなります」(石川氏)。
また、これまで基幹システムと専用端末間のデータ移行で利用していたFDやUSBメモリのような可搬記憶媒体は使う必要がなくなる。「データを保存した外部媒体を持って金融機関まで出向く、という作業が無くなるだけでセキュリティリスクは大幅に低減できます。そもそも、LGWAN自体が地方自治体専用の高セキュリティなネットワークなので、LGWAN経由でファームバンキングが実現できるという点からも、セキュリティは間違いなく向上します」(齋藤氏)。
JFT-LGWANの導入にあたり、ファームバンキングの相手先である金融機関とも密に連携して進めたという。「我々と同じく金融機関も、やはり新たな仕組みの導入には慎重な面があります。ITベンダーとしてのTOKAIコミュニケーションズの実績を説明し、またTOKAIコミュニケーションズからも後方から支援してもらったことで理解が得られ、計画通りに導入を完了させることができました」(齋藤氏)。
「予算編成の都合上、通常であれば導入まで1年はかかる状況のなか、今回非常に短期間でJFT-LGWANを導入することができたのも、TOKAIコミュニケーションズにレスポンスよく支援してもらったことが非常に大きかったと考えています。今後はまちづくり課や会計課など、我々と同じような処理を行っている他課の業務でもJFT-LGWANを活用することができれば、西伊豆町全体のメリットにつながります。TOKAIコミュニケーションズには今後もいろいろな場面でのサポートを期待しています」(石川氏)。
- 本導入事例の内容は制作時(2019年4月)のものであり、変更されている可能性があることをご了承ください。